『名も無き男たちの詩』 司馬ごくたろう先生作

京の大通り カブキ者が通りゆく。
 俺は強いと言いたげに
  肩で風を切って歩いてゆく。
   喧嘩の相手を捜しながら
    視線を飛ばし歩いて行く。

  来るぞ。
 強いかな。
  強そうだ。
 勝てるかな。
  勝てるさ。
 じゃぁ、やるか?
  ・・・。
 どうした?
  ちょっと待て。
 どうした?
  奴は強そうだ。
 強いだろうなぁ。
  ホントに強そうだ。
 やったら・・・負けるか?
  負けはしないサ。
 勝てるのか?
  ちと難しい。
 何が怖い?
  怖くはないサ。
 じゃぁなんだ?
  足が・・・。
 足が?
  速そうだ。
 ・・・。
  ・・・。
 足が速いと勝てぬのか?
  いや、そうじゃない。
 じゃぁなんだ?
  追いかけられる。
 追いかけ?
  逃げたら追いかけられる?
 追いかけられたら?
  逃げ切れぬかもしれぬ。
 なんだ、負けるのか?
  負けはしないさ。
 負けるんじゃないのか?
  負けるわけはないサ。
 じゃぁ勝てるのか?
  あぁ勝さ。
 じゃぁ、なんで逃げるんだ?
  勝ち逃げさ。
 勝ち逃げ?
  あぁ。勝ち逃げさ。
 ・・・。
  ・・・。
 逃げて追いつかれたら?
  疲れるだろう?
 そりゃ疲れるな。
  疲れたところに不意打ちを喰らってみろ。
 それはイヤだな。
  イヤだろ。
 イヤだな。
  あぁイヤだ。
 でも誰が俺たちに不意打ち喰らわすんだ?
  誰でもいいさ。
 誰でも?
  俺たちだって誰でもいいから斬ろうとしてるだろ。
 あぁ。確かにそうだ。
  そうだろう。
 ・・・。
  なぁ・・・。
 ん?
  なんだなぁ・・・。
 なにが?
  そんなに強いのかなぁ?
 強いんじゃないのか?
  どのくらい?
 さぁ、どのくらいだろう?
  試してみるか?
 試すのか?
  どうしよう?
 やめたんじゃないのか?
  あぁ、やめた。
 なら、やめようぜ。
  そうだなぁ。
 やめようぜ。
  やめようか。
 ・・・。
  ・・・。
 ・・・。
  ・・・。
 ぉぃ。
  ぉぅぃ。
 ・・・。
  ・・・。
 通りすぎたぞ。
  通り過ぎたな。
 行っちまったぞ。
  行っちまったな。
 いいのか。
  たぶんな。
 そうか。
  そうさ。
 いいか。
  いいさ。
 ほっとするな。
  ほっとしたな。
 ・・・。
  ・・・。
 なぁ。
  ん?
 そんなに強いかなぁ?
  どうだろう?
 やったら勝てるかなぁ?
  勝てるサ。
 ・・・。
  ・・・。
 引き返して来ないかな?
  脅かすな。
 怖いな。
  怖い。
 ・・・。
  ・・・。
 そんなに怖いかなぁ?
  怖くはないサ。
 やっぱ、やっちまおうか?
  あぁ、また今度な。
 そうだな。また今度だな。
  今度だな。
 ・・・。
  ・・・。
 なぁ、何んて言ったっけ?
  誰が?
 あいつ。
  ・・・。
 ・・・。
  確か・・・
 確か?
  慶・・・次郎?
 ・・・?
  ・・・?
 そんな名前だったっけ?
  ・・・多分。
 ・・・。
  ・・・。
 怖いな。
  あぁ怖いな。
 ・・・。
  怖い。



メール 司馬ごくたろう先生にファンレターをだそう!!