「戦国の時代へ・・・」第18話 湘南B作先生作

車が霧に迷い崖から転落するという、きっかけにより現代から永録元年(1558年)織田信長が今川義元を破る、桶狭間の戦いの2年前の世界へタイプスリップしてしまった中嶋太郎達一行(本間利和、沖芳子、望月美貴)、藤吉郎(のちの豊臣秀吉)は、偶然か何かの導きか織田信長と会うことができ、中嶋太郎、本間利和、沖芳子、望月美貴の4人は客人として、藤吉郎は草履とりとして信長に召し抱えられることになった。
その後、秀吉は出世し武将となり、私達も蘭丸、坊丸、力丸の教育も行うことになり忙しい日々が続いた。

その中、信長は本格的な浅井(小谷城)攻めを開始した。
小谷城を信長の軍が囲むと、私と利和、美貴、芳子の4人は京より信長の本陣へ向かった。
私達が信長本陣に到着した時は孤立無援の小谷城は落城も時間の問題と思われた。
しかし、信長の重臣達は勝利直前の盛り上がった雰囲気はなく、重苦しい雰囲気だった。
長政に嫁いだとはいえ、信長の妹市が落城寸前の城に残っているのだ。
また、市はただの信長の妹、主君の妹というだけでなく重臣たちの憧れの的だった。
私達は信長の本陣につくと信長に面会し、小谷城に行き市に会いたいと申しでた。
信長はいい返事はしなかった。
「貴様らが、落城寸前の城に行き、市にあってどうするのだ。」
信長が言うと、
「お市様を助け出すにきまっているじゃん。
信ちゃんだって、お市様助け出したいんでしょう。」
利和が言った。
「市は浅井に嫁いだ身、わしとは関わりない、助け出すわけにはいかぬ。」
信長が言うと、そばにいた柴田勝家が
「城まで私が共します。」
勝家にしてはめずらしいことを言ってきた。
しかし、同じく信長はいい顔をしない。
「そういえば、お市様に頼まれた洋服届けなくては・・・」
美貴が言っても相手にしなかった。
すると、秀吉が出てきて、
「落城寸前とはいえ、小谷は山城、難攻不落の名城、力攻めではなかなか落ちません。
わしは稲葉山(岐阜)城攻略以来、山城攻めを得意としております。
稲葉山(岐阜)城攻略と同様、城内部に潜入し敵を混乱させます。
その隙をついて本隊が総攻撃に及べば、楽にこの難攻不落の名城も落ちると存じます。」と力説した。
その力説は信長をも動かした。
「小谷攻略の件、さるにまかせる。
じゃが、息子を助けることは許さぬぞ。」
信長はそう言い放った。
それを聞くと、秀吉は小谷潜入の策を練り始めた。
それには私達も参加した。
「わしは、長政殿は仕方ないにしても、お市様と三人の姫たちと万福丸(長政と市の息子)もお助けするつもりじゃ。
信長様の命にはそむくことになるが・・・。
そこで、長政殿、お市殿とじっこんの中嶋殿たちに説得にあたっていただきたい。」
武装しているわしらが押しかけるより一見商人風のおねしたちの方が都合がいいし、
腹を割って話せるじゃろう。」
説得に行くことは私達には願ってもないことなので、二つ返事で了承した。
その後、秀吉は私たちを無事に場内に入れる手を浅井との交渉を交えて模索した。
浅井からも私達4人のみの入城を何とか許してもらえた。
私達が通された部屋には長政1人がいた。
「そなたたちにまたこのように会えるとは思わなかったぞ。」
長政の表情は落城寸前の城主の顔とは思えずに明るかった。
「市と娘達の救出の件じゃな。」
長政が先に口を開いた。
「はい、お市様と姫様、それに万福丸さまの救出です。」
私が答えた。
「政ちゃんも信ちゃんに頼んで助けてもらうから、おとなしく降伏してよ。」
利和が言った。
すると、長政は大笑いし、
「わしまで助けてもらうまでにはまいらん。
信長殿を裏切ってしまった以上、こうなることも仕方あるまい。
信長殿ならきっと天下布武を成し遂げるだろう。
何も思い残す残すことはない。」
「しかし、男子の万福丸を救ってくれると信長殿が言ったのか?」
「信長殿は許さないかも知れません。
しかし、姫達とは別になんとか私達でかくまおうと思います。」
芳子がきっぱりと言った。
「あんな、小さな子を殺すわけにはいかんわ。」
続けて芳子は言った。
「分かった。
市と子供達はそなたたちに任せよう。
今からわしが説得に行くから、ここで待っていてくれ。」
長様がそういって部屋を出ようとすると、
「これを。」
と美貴が長政に包みを渡した。
長政を包みを受け取り、少し不思議な顔をした。
「お市様の洋服です。」
美貴が言うと、
「なにも、こんな時に渡さずとも、城外に救出したらいくらでも渡せるものを。」
長政は言った。
「包みには姫達の洋服も入っています。
是非にも最後に長政様に洋服を着ているお市様、姫様達を見てもらいたくて。」
美貴がそういうと、包みを持ちこちらに一礼して長政部屋を出て行った。
その後私達はかなりの時間、部屋で待たされた。
そして、部屋の襖が開き市に娘達、万福丸が入ってきた。
利和と美貴は市に娘達を連れて城外、秀吉のところへ向かった。
私と芳子は万福丸を連れて一路岐阜へ向かった。
私達が城を出たのが分かると秀吉及び信長の本隊は小谷城へ総攻撃をかけ、浅井長政は切腹し小谷城は落城した。
利和、美貴は信長本陣へ市と娘達を連れて行った。
信長は城が落ちたこともあり、上機嫌だった。
市を助ける必要はないと言った信長の言葉は、今の信長にはなかった。
しかし、市は長政が切腹したばかり、また万福丸が無事かどうかもわからずに気が晴れるわけはなかった。
一方、私と芳子は万福丸を連れ岐阜へと急いでいた。
そこで、最悪なことに落ち武者狩りをしていた秀吉家臣蜂須賀小六に見つかってしまった。
小六といえば、秀吉家臣の中でも一番の頑固者、私は最も嫌な人に見つかったなと思った。
せめて弟の秀長にでも見つかればと思ったのだが・・・。
「おぬしらは、どこへ行くんじゃ。」
小六は言った。
小六と私と芳子はもちろん面識がある。
小六にしてみても、秀吉とつながっている私たちを捕らえてどうこうするつもりはなかった。
しかし、私と芳子、子供1人で岐阜の方に急ぐ私達を不信に思ったのだ。
「その子はどこの子じゃ。」
小六は続けていった。
「小谷城下でのみなしごです。」
私が答えると、
「かわいそうや~から、蘭丸達と一緒に私が育てるんや。」
芳子も言った。
「まさか、その子は万福丸ではあるまいな。」
小六はもちろん市と姫を助けに小谷城に私達が入ったのは知っている、それゆえにそう言い出したのだ。
「秀吉殿は万福丸を助けろと言われた。
しかし、信長様の気性を考えると、主命にそむいて万福丸を逃したと判ったあとの信長様は秀吉殿に対してどんなお叱りをするかわからん。
わしとしては万福丸を助けることは出来ぬ。」
「この子は私が助けるんや。
さるには関係ないやろ。」
芳子は言った。
「小六、そのくらいでいいだろう。
兄者も万福丸殿を助けるつもりじゃ。
それなりの覚悟も出来ているじゃろう。」
私たちと小六のやり取りを見かけた秀長は言った。
「この子はあくまでも、長政殿の子としてではなく、ただのみなしごとして育てますので。」と私が言い、そのままその場を立ち去り岐阜へ戻った。

信長も小谷が落城すると、岐阜へ戻り今回の戦で手柄を立てたものに対して褒美を与えた。
今回の戦いの一番手柄は秀吉とされ、小谷城が与えられた。
これで秀吉も一国一城の城主となった。
そして、私たちも呼ばれ、市と姫たちの救出について信長に礼を言われた。
その後、
「そういえば、今月の蘭丸たちの保育料払わなければならないな。」
と信長は言い、金を芳子に渡した。
芳子はその金を数えて、
「いつもより、多いですけど。」と言った。
「そなた達は小谷城下でみなしごを拾ったらしいではないか。
その子の分じゃ。」
と信長は言った。
私は言葉を返そうとしたが、信長は制した。
「そなた達が拾うくらいじゃ、さぞかし凛々しい子じゃろう。
蘭丸達どうよう、しっかりと育ててくれ、それによってはいくらでも出世させるぞ。」
信長はこの言葉だけを残した。



メール 湘南B作先生にファンレターをだそう!!