「戦国の時代へ・・・」第23話 湘南B作先生作

車が霧に迷い崖から転落するという、きっかけにより現代から永録元年(1558年)織田信長が今川義元を破る、桶狭間の戦いの2年前の世界へタイプスリップしてしまった中嶋太郎達一行(本間利和、沖芳子、望月美貴)、藤吉郎(のちの豊臣秀吉)は、偶然か何かの導きか織田信長と会うことができ、中嶋太郎、本間利和、沖芳子、望月美貴の4人は客人として、藤吉郎は草履とりとして信長に召し抱えられることになった。
その後、秀吉は出世しついに一国一城の城主となり、信長も居城を安土城に移し、私たちもそれに従い安土城下に移った。

私達は、数えると24年間この戦国時代にくらし、すっかりこの時代にも慣れて生活していた。そのような時、いずれ来るとは分かっていた、私達のこの時代での生活を揺るがす転機、本能寺の変は間近に迫っていた。
安土城下にある美貴の洋服屋の戸を叩く音がした。
「それがし、決して怪しいものではござらん、木枯らし紋次郎でござる。」
風に混じってそのような声がした。
「光秀の追って?」、芳子が言い、私達は身構えた。
「チュウリン、紋次郎だよ。
いつか甲斐の国であった。」
利和は安心したような口調で言った。
「紋魚郎?」、美貴が言った。
「違う、紋次郎。」
利和は訂正し、洋服屋の扉を開けた。
木枯らし紋次郎は甲斐から長旅をしてきたのか、ボロボロの身なりだった。
「中嶋殿、本間殿、道を作りましたぞ。
是非とも、一日で京の都まで行ける。馬より早い乗り物に乗せていただきたい。」
「紋次郎、せっかく来てくれて悪いけど、オラたちは今それどころじゃないの。」
利和は言った。
「本間殿、約束が違うではござらんか。
私は、馬より早い乗り物に乗るために、あの時より今まで、昼もなく夜もなく、
道作りに励み京、堺まであの乗り物が通れる道を作ったというのに。」
「紋次郎殿、道は一人で作ったのですか?」
芳子が聞いた。
「一部、弟子達をだまして手伝わせたりしたが・・・。」
「ちょっと、待って、本当に京、堺まで車が通れる道を作ったのか?」
私が聞いた。
「本当に決まっておろうが・・・。」
「これは、使えるかもしれない。」
私は、ある作戦をひらめいた。

私達と木枯らし紋次郎は入念な打ち合わせをして、私と木枯らし紋次郎殿は、芳子が育てあげた自称世界一の駿馬で甲斐の国を目指した。
美貴は京へ、利和は堺へ、芳子は安土の城へ向かい、信長と行動をともにすることにした。

6月1日、本能寺の変の直前である。
芳子は、本能寺の一室にいた。
当然、この寺には、信長、蘭丸らも泊まっている。
日も暮れ始めた。
町の様子、光秀軍の様子を見ていた美貴が本能寺にやってきた。
「やはり、予定どおりよ。
光秀さんは、今日この本能寺を襲うつもりよ。」
「それでは、計画通りやね。」
「で、中嶋君は?」
美貴は聞いた。
「まだ、来ないわ。
中嶋君が、来なければ何も始まらん。」
芳子は言った。
「とりあえず、待つしかないわね。」
そして、時がたっていった。
「そろそろ、光秀軍くるで。」
芳子も言い、美貴も不安になってきた。
その時、夜更けだというのに大きい音がした。
「光秀軍か?」
芳子が言った。
信長の侍女も驚いて、様子を見に行こうとした。
「何でも、ないです。
この蛙の香が動き出したので?」
と美貴が誤魔化した。
「どーゆう事、この蛙の香が動き出すとは?」
侍女は怪訝そうな顔をした。
「ふくさをかぶせたら動きは止まりましたので・・・。」
芳子は言った。
「なにか、大変な事がおきそうな予感がしますね。」
美貴が言うと、
「だーはー、ありえる。」
と侍女はそう言い、去って行った。
「あの侍女の人、昔信長様のおっかけしていなかった?」
と侍女をなんとか説得した美貴と芳子は、話しながら音のする方へ行った。
そこには、ボロボロの車と私と木枯らし紋次郎がいた。
「何とかまにあったか。」
美貴がほっとした声で言った。
「いや、こんなに早い乗り物があるとは・・・」
木枯らし紋次郎は興奮状態であった。
とりあえず、私と木枯らし紋次郎、芳子に美貴は寺の一室に入った。
「まずは、信長様に会いにいかなくてはならないな。」
と、私が言った。
「そうやね、あとは上手く信長様を車に乗せ、この寺から脱出させれば成功ね。」
「しかし、なんで車があんなにボロボロに。」
美貴が言うと、
「途中、道なき道を走ったりもしたからね。」
私が言った。
「でも、紋次郎殿があそこまで道を作ってくれて助かりました。」
私が言うと、
「わしは信長などに貢献したくなかったのだが・・・」
木枯らし紋次郎は言った。
木枯らし紋次郎は長篠の戦いで、遠くから鉄砲で狙う信長に対し卑怯者だと武士なら正々堂々と戦えと信長嫌いになっていた。
「とりあえず、信長様のところに行こう。」
といい、私達は信長に謁見した。
最後まで嫌がっていた木枯らし紋次郎も。
「信長様、武田も滅びて、天下布武もまもなくなりますが、その先天下はどうするつもりですか?」
私は信長に聞いてみた。
「日本が、しっかりと纏まれば、次は世界じゃ。
わしは、とりあえずの日本の政治は信忠に譲り、世界中を回り、
日本にない文化を吸収し、世界どこのくににもない新しい文化、
国を作って生きたい。」と言い、今日の信長は機嫌がいいのか世界への夢を語りだした。
その夢を聞いて、木枯らし紋次郎殿は驚嘆した。
この国を、そのようなすばらしい国に。
木枯らし紋次郎の信長嫌いはすっかり収まり、逆に信長好きになっていた。
木枯らし紋次郎も信長も新しいもの好き、すっかり意気投合したようだ。
しかし、そのような楽しい会話の時間が長く続くはずもなかった。
遠くからやってくる多数のひずめの音、鉄砲の音がとどろいた。
そこへ、坊丸が駆け込んできた。
この寺が兵に囲まれております。
信長は、表情が変わった。
「そのようなことは、聞かなくても分かっておる。」
と怒鳴りつけた。
そこへ、蘭丸が飛び込んできて
「敵の旗印は桔梗の紋。
明智日向守光秀殿、御謀反!!」
「なに、光秀が謀反。」
信長は立ち上がり、槍を手に取り寺の境内に出て応戦した。
しかし、相手は織田の軍勢の中でも優秀な光秀の軍、人数も非にならなかった。
どこからともなく、火があがり寺が炎上し始めた。
信長は、覚悟を決め寺の中に入ってきた。
先ほどの怒りの顔はなく、さっぱりとした顔をしていた。
「蘭丸、介錯を頼む」
と信長は一言、言った。

「信長様、最後に一つ見せたいものがあるんですが。」
私が言った。
「最後に、見せたいものとは?」
「馬より速く走る乗り物です。」
芳子が言った。
「馬より速く、走る?
馬にかけては周りに引けを取らぬ芳子殿がそういうのなら、この世の最後に見てみたいものだ。」
その信長の言葉により、私達は車のところに行って、信長を車に乗せ、私、芳子、美貴、蘭丸が乗り込んだ。
しかし、木枯らし紋次郎は車に乗ろうとはしなかった。
私が、聞きに行くと、
「おぬし達は、信長をこのまま脱出させるつもりだろう。
信長は、ここで死なすのはおしい男じゃ。
今日、話していてそれがよく分かった。
といはいえ、寺から信長が逃げたとあらば、光秀も必死になって探すであろし、天下に逃げ隠れする卑怯者だという風評が残ってしまう。
ここは、わしが身代わりとなり、寺に残る。
わしは、馬より速い乗り物に乗せてもらっただけで満足じゃ。」
そういい、寺の火の中に消えていった。
私が追いかけようとしたが、
「早く、脱出しなくては、車とはいえ、火に巻き込まれては助からないわ。」
と美貴にとめられた。
私はあきらめ車に乗り込み、エンジンをかけた。
明智の軍勢が車に気づき、車に殺到してくる。
私はクラクションをけたたましく鳴らし、相手がひるんだところを、車を発車させた。



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