「戦国の時代へ・・・」第6話 湘南B作先生作

車が霧に迷い崖から転落するという、きっかけにより現代から永録元年(1558年)織田信長が今川義元を破る、桶狭間の戦いの2年前の世界へタイプスリップしてしまった中嶋太郎達一行(本間利和、沖芳子、望月美貴)、藤吉郎(のちの豊臣秀吉)は、偶然か何かの導きか織田信長と会うことができ、中嶋太郎、本間利和、沖芳子、望月美貴の4人は客人として、藤吉郎は草履とりとして信長に召し抱えられることになった。

私達が来た後も、信長は小さな戦に何回か出陣することはあったが、それほど大きな戦もなく、客人扱いの私達や草履とりの藤吉郎は戦に行くわけでもなくのんびりとすごし、永録元年も終わりに近づき肌寒くなってきた。

「チュウリン、ちょっとこれ重い。」
私が信長から拝領した刀を眺めていると、本間が大き壺みたいなものを持って部屋に入ってきた。
「本間、何持ってきたんだ。」
私が聞くと、
「これ何か分からない、火鉢だよ。
現代と違って、部屋を暖める手段、これしかないんだから。
信ちゃんの部屋にあったの思い出して、勝手に持ってきちゃった。」
「勝手に持ってきたら、あとでの信長様のお怒りをかうんじゃないか。」
私は再び聞いた。
「大丈夫だよ。
信ちゃんいつも動き回っているから、いつも全然寒そうじゃないんだもん。
火鉢なんか必要ないよ。」とあっさりと言った。
そのとき部屋に沖が入って来た。
「信長様は、寒い日には火鉢、お市様や濃姫様のところに持って行くのみたで。」
沖が言った。
「やべい、信ちゃんそんなことしていたの。」
さすがの本間もあせった。
「それより、最近美貴ちゃん見かけへんけど、どこ行ったんやろ。」
沖が言った。
私も最近望月を見かけていなかった。
「まさか、今川か斉藤にでも内通しているんじゃないだろうな。」
藤吉郎が部屋に入ってきて言った。
「さる、いつからそこにいるんや。
美貴ちゃんが内通しているってことはないやろ。
あるとすれば、着物を買いあさっているくらいだとおもうで」
沖は望月の内通を否定した。
「じゃあ、仕方ないからおらが望月さん探しに行く。
チュウリンも行くよ。
その前に、さる、オラとチュウリンの草履とって!!」
「わしは、本間の草履とりじゃないんだが・・・」と言い、しぶしぶ私と本間の草履とった。
その草履を本間は火鉢の上に置いた。
「こうしておけば、草履を履いたとき冷たくなくていいでしょう。」と本間は自慢げに言った。
「信長様の草履も暖めておいたほうがいいのかのう。」
藤吉郎はつぶやいた。
「本間、なんか焦げ臭いで。」
沖が言った。
「あっ、草履がごげちゃった。
火鉢の上じゃあ火が強すぎたのかな。」
「本間にだまされて、信長様の草履火鉢の上に置いたりしなくてよかった。
危うく草履焦がしてお叱りを受けるところじゃった。
かといって、尻に敷くわけにもいかんし、懐に入れて暖めておくか。」
と言い、藤吉郎は信長の草履を懐にいれた。
その時、足音が足音高らかに信長がやってきた。
「あっ信長様、最近美貴ちゃん見かけないんだけど、どこ行ったかしらへん。」
沖がすかさず聞いた。
「城下の着物屋で最近よく見かけるぞ。」
信長は答えた。
「やっぱり、望月さん着物買いあさっているんだよ。
望月さん、この時代のお金持っているわけないし、信ちゃんのつけで買い物していると思うから、この城の金蔵が空にならないように気をつけてほうがいいよ。」
本間が言った。
「望月殿が着物買ったくらいじゃあ、清洲の金蔵は空にはならんわ。
それより、中嶋殿これを望月殿に届けてくれぬか。」
と言い、信長は書状を私に渡した。
「これは・・・。」
私が不思議そうな顔をしていると、
「商売の許可書みたいなものじゃ。」
「信長様、城下で商売するのに許可書なんか必要なんですか。
そんな無駄な事やめたらいいんじゃないんですか。」と沖が厳しい口調で言った。
「わかっておる、いずれ楽市楽座といって、こんな許可書なくても誰でも自由に商売できるようにする。
関所も廃しする。
しかし、今のところは必要じゃ。」と信長はそういうと、信長は庭に出ようとした。
そこで、藤吉郎はすかさず、懐で温めた草履を差し出した。
その草履を履き、
「さるも、よく気がつくようになった。
沖殿の手助けをして、馬番もやってみい。」と言い残し信長は去っていった。
「さるの手助けなんかいらへんのに。」と沖はつぶやいたが、信長の言うことだからと思い、藤吉郎に馬番の手助けをさせることにした。
私と本間は望月を探しに城下へ向かった。

その頃、城下では望月が商売をめぐってやくざもの数人に絡まれていた。
「ここで俺達の許可なく商売できると思ってるのか?」
「ここは、空き地だし着物の商売くらい自由にしてもいいでしょう。
信長様だって、きっとなにも言わないわよ。」と望月も負けていなかった。
「信長だと。
あのうつけ殿なんか関係ない。
俺達は、信長が清洲に入る前の守護代織田家の時代からここの商売を取り仕切っているんだ。」と大笑いされた。
野次馬たちで人だかりも出来始めた。
「おぬしら、あくまで今の清洲の城主は織田信長様だぞ。
先代の頃の話しなど無意味ではないか。」
以前、駿府の馬屋で助けてもらった武士だった。
やくざもの一人が、武士に突っかかって行こうとした、
「やめとけ、おねしらではあのかたには勝てぬ。」
と一人の男がやくざものを止めた。
犬千代だった。
犬千代に止められたやくざ達は捨てぜりふをはいて逃げていった。
「一度ならずも二度まで助けてもらいありがとうございました。」
望月は助けてもらった武士にお礼を言った。
「望月殿は、森殿をご存知でしたか。」
犬千代が口を挟んだ。
「森殿? やはり森可成様だったんですか。」
望月は言った。
武士はうなずいた。
以前、沖が言っていたパパ(森蘭丸のパパ)という予想は当たっていたのだ。
「拙者は、信長様からやくざものに絡まれることもあるかも知れぬから様子を見てやってくれと頼まれたまでよ。
そのうちに、信長様から商売の許可証をもらえるだろうから、大手を振って商売できよう。」
そう言い、可成と犬千代は野次馬を散らすようにしながら出て行った。
その後、私と本間が望月のところに信長様からの書状を持っていった。
「望月さんも何も言わないで勝手に着物屋なんて始めようとするから。」
「着物屋じゃないで、洋服屋よ。
芳子ちゃんも馬育てる仕事見つけたし、私もなにかやってみたかったのよ。
あとで、みんなを驚かそうとしたのに、信長様にはばれちゃったか。」
望月は言った。
「信ちゃんは、城下を散歩するの好きだからね。」と本間が言った。
「でも、望月さんお金持っていないんでしょう。
仕入れのお金とかって信長様のつけだったの。」と私が聞いた。
「違うわよ。現代のお金でも、50円、100円、500円の銀貨は使えるってことに気づいたのお札は使えないけどね。結構価値あるのよ。」
確かに銀貨については戦国の時代でも通用するようだった。

沖は馬を育てる、望月は洋服屋とこの戦国時代へでの生活を始めていた。
私もなにかこの時代ですることを考えていかなくてはと感じた。

そうしている間にも年月はたち、駿府では今川義元が大軍を集め始めていた。
信長に危機は確実に迫っていた。



メール 湘南B作先生にファンレターをだそう!!