「戦国の時代へ・・・」第9話 湘南B作先生作

車が霧に迷い崖から転落するという、きっかけにより現代から永録元年(1558年)織田信長が今川義元を破る、桶狭間の戦いの2年前の世界へタイプスリップしてしまった中嶋太郎達一行(本間利和、沖芳子、望月美貴)、藤吉郎(のちの豊臣秀吉)は、偶然か何かの導きか織田信長と会うことができ、中嶋太郎、本間利和、沖芳子、望月美貴の4人は客人として、藤吉郎は草履とりとして信長に召し抱えられることになった。
その後藤吉郎は馬番に出世し、芳子も馬の世話、美貴は洋服やを始めていた。

桶狭間の戦いの負傷者の手当ても終わり、私達は望月の洋服やでいつものように喋っていた。
洋服屋といってもこの時代の人になかなか洋服は取り入れられずに当然の如く商売になっていずに私達の集会場となっていた。

「チュウリン、聞いた?
ねねっちとさるが結婚するんだって。」
利和がまたどこかから情報を仕入れて来たようだった。
「なかなか、早耳だね。
ちょうどその話しを聞いていたところだったんだ。」
私が言うと。利和は回りを見渡して、私に沖、望月のほかにねねと犬千代の正妻まつがいるのを確認すると、
「そういうこと。
せっかく、おらが情報つかんで来たのにと残念がった。
ねねとまつは桶狭間の負傷者の手当て以来よくここに出入りしていた。

「でも、本間さんの情報って凄いですね。
私初めてここで話したのに。」とねねが言った。
「本間は情報屋やさかい。」沖も続けて言った。
「おらが情報集めてチュウリンがそれを本にまとめて未来に残すの。」
私はせっかくこの時代に来たのだから、信長などこの時代の人たちや事件を書記すことを始めていた。
それが、私がこの時代にタイプスリップした意義、また勤めのような気がした。

「でも、さるはそこら中でねねっちとの結婚言いふらしているみたいだよ。」
本間は言った。
「それで、祝言っていつやるんですか?」
望月が聞いた。
「なるべく早いうちにとは思っているんですけど?
みなさんも祝言には出席して下さいね。」
「おら、ぜったいに行く。」
利和が言った。
「じゃあ、私達で仲人を引き受けます。」
まつが言い、仲人は犬千代とまつに決まった。

「美貴さん、美貴さんの時代の祝言ってどんなものなんですか?」
ねねは聞いた。
「神前と教会があって・・・。」と望月と沖で現代の結婚式について説明し始めた。
その説明を聞いたねねは、
「私、ウエディングドレスって着てみたいです。
美貴さんの洋服屋さんで作ってくれますか?」
ねねは言った。
望月はびっくりした。
洋服屋といっても、現代では普通の会社員の美貴は当然はウエディングドレスなんか作ったことなかった。
「美貴ちゃん、初のお客さまやね。」と沖も言った。
「でも、生地とかもあるし、私、ウエディングドレスなんて作ったことないしな?」と不安な顔をした。
「望月さん、大丈夫だよ。
ねねっち、ウエディングドレスなんか見たこと無いんだから、大体できていればいいよ。」と利和が望月の耳元でさささやいた。
「うん、上手く出来るか分からないけど作ってみるわ。
祝言のお祝いだから、お金なんて取らないから。」と望月はいい、その日から望月はウエディングドレスの制作に入った。

そして、藤吉郎とねねの祝言の日になった。
望月はなんとか夜通しでウエディングドレスを完成させた。
白い着物の生地とレース編みを用いた衣装だった。

私と利和は朝から魚を釣りに行き、沖とまつで祝言の料理を用意した。
望月はねねにウエディングドレスの着付け及び髪型を現代風に整えた。
もともと清洲一の美人と評判のねねだけあって、現代でもモデルで通用するくらいによく似合っていた。
沖や望月もこの時代に来てから着物を着ていたので、私と利和も久しぶりの洋服姿の女性ということで新鮮な気持ちになった。
藤吉郎や犬千代は初めての洋服姿の女性ということであっけにとらわれていた。
これでねねは日本初のウエディングドレスを着た人になるのだろうか?
ねね本人は、嬉しがるというより、恥ずかしがっていた。
この時代の女性としては仕方ないことだっかも知れない。
とくにねねはどちらかといえば地味な質素な女性だった。

祝言は、藤吉郎とねねの新居で藤吉郎にねね、仲人犬千代まつ夫妻、私に利和、望月に沖の出席で始まった。
私達は現代の結婚式で歌う歌を歌うことから始め、犬千代などの歌踊り最後には藤吉郎の歌踊りというように盛り上がって行った。

盛り上がりの絶頂のとき、家の突如家の中に入ってくる人がいた。
「あっ、信ちゃん。」
利和が叫んだ。
それと同時に一同ひれ伏した。
「さる、祝いの品じゃ。」そういうと、藤吉郎に対し祝いの品をなげると、
「ねね、ひれ伏していたら顔が見えぬ。
表をあげろ。」と言った。
ねねが顔をあげると、
「なかなかいい娘ではないか。
さるにはもったいないわ。」と笑い、
「美貴殿、これがそち達の時代の着物か。
なかなか面白い着物じゃ。
そちたちの時代の話しも聞かなくてはならんな。
美貴殿、わしにもそち達の時代の着物を作ってみてくれ。」と信長は言い捨てた。
そして、去りぎわに
「このような、嫁をめとって、馬番だけをやっているわけにも行くまい、薪係、台所方を命ずる」と言った。
藤吉郎はさらにひれ伏し信長に感謝した。
「信ちゃんはいつも自分がいいたいことだけ行ってしまうんだから。」と利和はいったが、信長自ら藤吉郎のような身分の祝言に顔を出すと言うことはめったになかったので、藤吉郎とねねにとってこの祝言のなによりの思い出になった。
また、望月にとって信長の洋服を作るという新しい仕事も出来た。

祝言が終わると藤吉郎は今までにも増して働くようになっていった。




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